ありがちなミス (19)

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3 - 3/4 (sage) 2015/10/22(木) 21:05:37 ID:D2LM/npI

 ごくり、と喉を鳴らしたのは誰であったか、はたまたその場の全員であったか。
「尿って、お前……」
 風俗弁護士もさすがに驚きを隠さず言う。
「なんだってそんなものを?」
「この前亡くなったおじいちゃんに、教わったナリ」
 Kは懐かしい思い出の1ページをそこに見出そうとするかのように目を細め天井を見つつ、滔々と話し始める。
「おじいちゃんがむかーしうちに遊びにきたときのことナリ。
 そのとき、当職は便秘20日目に突入していたナリ。
 その頃からすでに下剤に耐性が出来つつあった当職は、それはそれはもう地獄の苦しみで毎日の半分をトイレで過ごしていたナリよ。
 当職は自戒も込めてそのころを「臥薪嘗胆の日々」と呼んでいるナリが……それはまあ、別の話ナリ。
 パパやママは、あと3日出なければ病院で手術して糞を取り出すしかないだろう、って話してたナリ。
 そんなとき、おじいちゃんが素っ裸でおトイレに入ってくると言ったナリ。『T、お前、私のオシッコ飲め』って」
「なかなかエキセントリックな人だったんだな」
「茶化さないでください。……それで、効いたんですか?」
 Yが慎重な口調でたずねる。
 Kは微笑を浮かべてみせた。
「当職が今、快便家でオムツが手放せないのは、あのときのおじいちゃんのおかげナリよ」
「よしY、お前やれ」
 風俗弁護士が軽い口調で言い放つと席を立つ。
「ま、待ってくださいよ。なんで僕が――」
「俺にそういう趣味は無い。安心しろ、席は外しておく。外でゆるゆりを一話視聴してくるからその間に済ませてくれ」
「ぼ、僕だって流石に、抵抗ありますよ!」
「なーにが抵抗だ。愛しの「T」とケツの穴に入れたり入れられたりしてるんだろ」
 瞬間、かっと赤くなったYの顔は羞恥ゆえか怒りか、もしくはその両方か。
「待ってほしいナリ」
 しかしBKBの鶴の一声によって、風俗弁護士はジャケットを羽織る手を止める。
「Kの小便も、当職には必要ナリ」
「……どういうことだ」
「おじいちゃん、遺言状に書いていたナリよ。『Tよ、私の可愛い孫よ。お前がもしまた便秘で困ることがあったら、尿を飲ませてもらうんだ』って」
「だから、Yにやってもらえばいいじゃないか」
 ふふ、と乾いた笑みを弁護士K弁護士は漏らす。
「遺言のつづきにはこうも書いてあったナリ。
 『その人はお前にとって、真に大切な人でなくてはならない。尿というのは、大切な人に飲ませてもらうからこそ、ときには聖水となり得るのだ』って。
 ……当職、Y君はとっても大切ナリ。だけど、かつての事務所の先輩も同じくらい大切ナリ」
 霜のような沈黙が事務所に下りた。
 YとKがじっと風俗弁護士に視線を注ぐ。
 ややもしてから、風俗弁護士がジャケットを床にたたきつける。
「わかったよ、やるよ! やればいいんだろ!」
「先輩、これを口に嵌めます。少しの間ですから我慢してください」
 どこから持ってきたのか、YがじょうごをBKBの口にセットする。
「本当の弁護士同士のスカトロプレイをみたいかい?
 オラ!オラ!オラ!オラ!オラ!オラ!オラ!オラ!オラ!オラ!オラ!オラ!オラ!オラ!オラ!オラ! 」
 風俗弁護士がチャックを下ろしながらやけくそ気味に叫んだ。