自由闊達讃歌 (37)

←← 掲示板一覧に戻る ← スレッド一覧に戻る

2 - 名前が出りゅ!出りゅよ! (sage) 2015/10/16(金) 19:11:49 ID:M/Sxgo/w

勢いそのままKは小走りに駅のホームへと駆け込もうとし、はたと立ち止まる。
今や当職は、社会を捨て家族を捨て恋人を捨て自由の身となった。
その我が身、どうしてあのような金属の物体に押し込める理由があろうか?
そこでKは近くの雑居ビル、その雨どいを利用し、どんどんと上へと昇ってゆくこととする。
陰嚢が雨どいにいい塩梅にこすれ、Kの喉から再び歓喜の声、すなわちファの#がこぼれでる!

――おお、自由闊達なるわが陰嚢よ!
――おお、自由闊達たる雨どいの存在よ!

「ペナント募集中」の貼り紙がなされている雑居ビルの7階、ついに雨どいによってKは絶頂へと導かれる。
未使用の亀頭、その先端からまろびでる白いシャワーが、眼下の街へ降り注いでゆく。

――おお、見よ、あの恋人たちの笑みを!
――おお、見よ、白き世界に映し出されし真理を!

ついに登り切ったKは屋上で、ふと横を見る。
なんとしたことか! 電車が走り出しているではないか。
追うのだ、追って、彼らに自由の到来を知らせるのだ!
ビルからビルへと飛び移りつつ、おおい、おおい、とKは乗客たちへと手を振る!
そしてビルとビルのすき間、その重力と空気によって構成された空間を移動するたび、Kの陰嚢は七拍子で、七拍子で揺れ動くのだ!

――おお、自由闊達なるわが陰嚢よ!
――おお、自由闊達たるわが肉体よ!

ふとKの全身は粟立つような感触に覆われてゆく。すなわち大便がしたいのだ。
電車との並列回路を解除し、彼はとあるビルの屋上において勢いよく排便をしてゆく、そう、ナイアガラのように!
Kはしげしげと観察したのちに大便を両手でそっとすくう。
そして屋上から跳躍したかと思うと、通行人に手あたり次第それを塗りたくってゆくのだ!

――おお、見よ、わが金色の両手を!
――おお、見よ、自由へと跳躍しつつある君たちの姿を!

ギリシア神話に出てくるミノス王は触れるものすべてを金に変えたことで知られているが、ああ、どうだろう、今のKはまさにそのようではないか!
そう、大便を両手に持ち塗りたくることこそが真なる自由への道であることを、彼はその身をもって証明したというのだ!
どよめきたつ群衆に、Kは呼びかける。

声なき声に力を! 新しい時代を!

堂々たるその雄姿に、思わず涙を浮かべなかった群衆が誰一人としていたであろうか!
彼らは各々糞を手に持ち、走りはじめる。もちろん先頭はKだ。

――おお、自由闊達たるわが大便よ!
――おお、自由闊達たる群衆の美しさよ!

しかし、なんという悲劇がそこに待っていたのだろう!
角を曲がったKが見たのは、かつての恋人、そして事務所の同僚であったYが、猟銃を構えている姿であったのだ!

当職を撃つのか。 Kは問う。

撃たねばならぬ。 Yはこたえる。 撃たねば、この群衆の反逆をおさめることなど、できはしないではないか。

ならば撃てばよい。Kは言う。 きみの震える指先が、当職を正確に撃ち抜くことができるのならば、さあ、撃て! そして新たなる秩序、混沌、絶望の海へと民を投げ込むがよい!