純度100パーセント (24)

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6 - 名前が出りゅ!出りゅよ! (sage) 2015/10/15(木) 00:30:47 ID:vDcoa3A6

6.

「はい、お疲れさま」
 4度にわたる水責めが終了すると、YはKのすべての拘束を解いた。
「今日はここまでだよ」
 Kに逃げ出す気力はもうない。ぐったりと床に横たわることしかできない。
「……今日は、って……」
「明日も明後日も、そのつぎも、ずーっとするってことさ」
 にっこりとYが笑う。
「……うし……」
「ん? 何か言ったかな?」
「どうして、こんなひどいこと……」
「どうして、か」
 いいよ、話そう。
 Yは語りだす。
「人間というのは、ひどく有機的な生き物だ。恋をし、欲望に翻弄されて生きている。
 人々の語る愛というのは、精々が30パーセントほどの愛情にすぎない。残りは性欲や得られる充実感、自己の肯定で構成されている。
 僕自身、きみと何度も愛し合ったよね。でも、それは醜く歪められた性欲の発散、「愛」という衣で都合よく隠された、欲求の発散方法であるとしか思えなかった。
 ……僕はね、きみの美しさを永遠に保存したいんだ。性欲や自己肯定の欲求に操作されることのない、100パーセントの愛情を持ちたいんだ。
 Kという存在に、何かしら有機物を越えた、永続的な存在としての美を僕は求めているんだよ」
「狂ってる……」
「そのとおり、狂ってるね。だからやめない。やめられない、という方が正しいのかな」
「こんなの、おかしいナリ……ずっとずっとなんて、耐えられないナリ……」
「ふふっ、人間の体ってのはね、きみが考えているよりもずっとずっと強いものだよ。……さて、一応だけど、これを嵌めておこうかな」
 Yは洋梨のような道具を取り出す。
「苦悩の梨ってね、名前通りの代物さ。舌を噛まれたら困るしね、これを口に嵌めておくよ。はい、あーんして」
 Kに逆らう力はもう残っていない。
 おとなしく、鳥の雛のように口を開ける。
「これはね、ここのネジをひねれば実の部分が開くという寸法になっているんだ。君がバカなことを考えないように、ちょっときつめに開けさせてもらう」
 みちみちとした音。Kの両目から涙が落ちる。
 ぷちぷち、という唇の端が裂ける音が聞こえたころ、Yは手を止めた。
「ちょっと行き過ぎたかなぁ。ま、我慢してくれよ。これもきみのためなのさ……あとは、体を拘束するのだけれど……ま、これは簡単な話だ。海老反りの体勢で縛ればいいだけだからね」
 手際よく体が縛っていくYを、Kは呆然とした目で眺める。
 なぜ、と考える余裕さえ、彼にはすでにない。
 今の彼は、現状の自分をぼんやりと観察することだけであった。
「それじゃ、僕は帰るね。明日の計画を練らないといけないから……やれやれ、愛情というのも難しいものだ」
 愛してるよ。そう言い残すとYは出ていく。
 静まり返った事務所のソファの上で、Kはしばらくじっと横たわっていたが、やがてぽろぽろと涙を流し始めた。