2 - 名前が出りゅ!出りゅよ! (sage) 2015/10/15(木) 00:28:24 ID:vDcoa3A6
2.
ぽた、ぽたと額に何かが垂れている。
流れてくる液体を、目覚めない意識の中なかば無意識に舐めとる。
――水。
うっすら開けた瞳に、スポイトを持った男が笑いかけてくる。
「ああ、やっと起きてくれたか」
「Y!?」
Kの意識が一気に覚醒してゆく。自分が全裸にされて、事務所のソファに転がっていることに気づく。
慌てて身を動かそうとするが、まるで言うことをきかない。先ほどの衝撃がまだ身に残っているうえに、両手足を縛り上げられているようだ。
「拷問、怖いよね」
Yが先ほどの「拷問全書」を手に持ち、ぱらぱらとめくりながら言う。
「僕だったら、絶対イヤだな。「殺してくれ」と懇願するほどの苦痛。延々とつづく苦痛。恐怖しか感じないね、あることないこと話すのも当然だ」
「……Y君、縄をほど――」
「ほどかないよ」
Kの言葉は撥ね退けられる。Yはこちらに歩いてくると、慈しむように彼のあごをそっと撫でる。
「ねえK、愛っていうのは理不尽なものだ。僕は気づいたよ。拷問も理不尽なものだ。その点において両者はどこか共通していると思わないかい?」
「Y、もうやめるナリ! 早く縄をほどくナリ!」
ひどく嫌な予感が走り、Kは叫ぶ。
「まさか。やっと手にしたチャンスをどうして逃せる?」
Yは行為の最中たまに見せるような、柔らかな笑みを浮かべる。
「さて、本題に戻そう。……魔女狩りは知ってるだろ? 言葉の響きから女性が被害を受けたように思う人も多いが、実際は多くの男性も犠牲となった。嘆かわしい、歴史の暗部」
Kは激しく身を動かすが、体が自由になることはない。縄が食い込み、血がにじみだす。
「T」
突然呼び捨てにされる。行為の最中、激しく興奮しているときにしか呼ばれない、Yだけの呼び方。
「僕は君に、魔女であるという疑いをかけた。今から証明してみよう」
「Y、お願いだから……」
YはKの言葉を無視すると、どこから持ってきたのか、真っ赤に焼けあがったひとつの焼き鏝を取り出す。
「ここに聖なる焼き鏝がある。これは神聖なるものであり、通常の人間には害はない。
もし君が魔女ではないのならば、これを足に押し当てたところで平気だろう」
「や、やめるナリ! そんなものつけたら大やけどするナリ!」
「君は魔女の疑いがある。どうして君の意見を聞く理由があろうか?」
もうダメだ。
思わず目を閉じたKであったが、しばらくしても何も起こらない。
恐る恐る見ると、Yがにっこりとほほ笑む。
「なーんてね。冗談だよ、冗談。こんなものつけたらK、ショック死しちゃうかもしれない」
Kは思わず安堵の息を漏らす。
「もう、Y君、悪ふざけにしてはやりすぎだったナリよ。おしっこ漏らしちゃいそうだったナリ」
「はは、すまない」
「まったく、もう。早く縄を――」
「代わりにこれから股裂きをおこなう」