2 - 2 (sage) 2015/10/08(木) 18:00:16 ID:I/nvxUoU
ここまで問題が山積みで火だるまの彼とわざわざ手を組み、事務所の代表になり、目立ちはしないが仕事もそれなりにこなしている。
お陰様で、彼の父親にもそれなりに信頼はされているつもりだ。
僕の経歴を見た上で、独り立ちを勧める声も沢山ある。
分野も違う『あの』唐澤と何故一緒に仕事をしているのか、と彼を馬鹿にするような態度で聞かれたこともある。
その度に、僕は日本人だけに許された特権である曖昧な笑みで濁してきた。
ああ、社会で生きていくというのは本当に本当に大変な話だ。
誰かと違って、ちゃんとしたストレスがあるならば、そのせいで鬱になる奴等の言い分も分からなくはない。
そこまでの苦労が今の僕にはある。
なのにどうして、
…どうして僕が、あの唐澤貴洋と一緒にいるかって?
…どうして僕が、あの唐澤貴洋と手を組んだのかって?
…どうして僕が、
「…山岡君」
カロリーの高そうなモンブランをつつきながら、彼は僕の名を呼ぶ。
「なんですか?唐澤さん」
「………からさんでいいナリ」
僕が笑顔で返すと、いつも彼はこうやって居心地悪そうに目を逸らす。
自信のなさそうなその態度は大抵僕をイライラさせるけれど、今はそれほど不快ではない。
僕が完全に主導権を握っているからかな。
「………山岡君、当職は山岡君がいないと駄目ナリ」
モンブランを一口。
「山岡君がいないと、外を歩くのも、電話に出るのも、怖いナリ」
今度はコーヒー。
「…からさん、」
この流れを何度繰り返したことか。
むしろ、何度繰り返してもダメなのか。本当に仕方ない人だ。
僕がついていなくては本当に何も出来ない無能だ。
「からさん、大丈夫ですよ。一緒に仕事頑張っていきましょうね」
どうして僕が、唐澤貴洋と一緒にいるかって?
「いつかきっとこの炎上騒ぎも綺麗に終わらせますよ。僕が最後までからさんを助けますから」
僕はこれからも上手くやっていくのだ。
今までもそうであったように。
最期まで上手くやってみせます。
全て綺麗に終わらせます。
だからそれまで、僕はあなたとずっと一緒ですよ、からさん。