虎視珍々 (5)

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2 - 名前が出りゅ!出りゅよ! 2015/09/20(日) 05:17:37 ID:aZH9AL0c

世界に飛び出した。

檻から出た僕らが再開することはなかった。
校外に出た白い兎は車に惹かれて死んだ
僕は学校中を敵に回した。
もう、学校は監獄の外ですらなくなったしまった。

僕には弟がいた。
僕と彼は一心同体だった。
互いの受ける苦痛を分かち合った。彼は僕の半身だった。
しかし、僕が部屋に閉じ籠ってから弟は段々変わっていった。
怒りを孕んだような眼差しのような、哀しむような、そんな目をするようになった。
そして、口をきかなくなった。
弟は僕と違って痩せていった。

父がある日、僕達兄弟を居間に並べさせてこう言った。
お前たち兄弟に宿題を与えよう。
人間社会において、食物連鎖の頂に立つシンプルな方法を証明しなさい。
出来なかった方には罰を与えよう。
しかし、私がバツを与えるわけではない。
答えを導けた者が導けなかった者に罰を与えるだけだからだ。

弟は父の宿題を聞き終えるとガックリと項垂れた。
今思えば聡明な弟は既に答えを導けていたんだろう。
僕は罰の意味を3日3晩考えた。しかし、煮詰まることはなく、カラカラと砂利のようにくだらない答えしか思いつかなかった。

弟は宿題の期限前日の晩に僕の部屋にやってきた。
兄さん、答えがまだ分からないみたいだね。
僕は答えを知ってるんだ。それを教えに来たんだ。

なに、それじゃあ厚史お前が罰を受けるというのか。

違う、答えは2つあるんだ。兄さん、僕らは二人共正解できるんだ。
そして、兄さん。僕は今後兄さんに、辛い十字架を背負わせる事になる。
許して欲しい。
そう言って、厚史は僕の部屋を立ち去ろうとした。僕は慌てた。

どういう事だ。厚史。一方の答えだけでも教えてくれないか。頼む。

厚史は笑顔で振り返ってこう言った。
僕の導いた正解は人に譲る事さ。
それが厚史の最後の言葉だった。

その翌日、近所の河川敷で自殺した厚史の死体が発見された。

もう一方の正解者として僕は生きている。
厚史がくれた正解を僕はきっと守れないだろう。
そして、僕ら兄弟が跳ね返した罰を隠し生きている。

だから、そう。遅れた宿題を提出するその時を、今か今かと待っているのだ。

-完-