4 - 名前が出りゅ!出りゅよ! 2014/07/30(水) 22:42:06 ID:9WV4Ffm.
その後、初老の男性一人降りた。身なりの整った、当職よりも裕福そうな男である。だがしかし、降りる間際、些か怯えたような表情をしたのが、唯一疑問であった。
次に学生が下りた。男は再び強い憎しみを覚えた。ただならぬ怒りを感じた。学生が降りる時、同じく怯えた表情であったが、男の気を晴れさせた。
列車は走り続ける。外の明るさは指数関数的に減っていき、いよいよ夜の到来を告げるようだった。車内に残っているのは、男と若い女性だけとなった。
男はふと女性に目を移す。女性は当職が見たこともないような法律の本を読んでいた。よく見ると胸のあたりにバッチがついていた。どうやら弁護士のようである。
「あの人も弁護士ナリか。勉学に励むとは良い心がけナリね。」
先ほどの男の判断は無事棚に上げられた。
列車が駅に近づく。速度が下がる。それに比例して、男は次第に苛立ちを覚え始めた。二人の学生に対して湧きあがったような、あの苛立ち、殺意である。
殺意の対象はもう一人の女であった。なんだかわからないが、この女を殺してやりたい。そう強く感じた。
列車が駅に到着するころには、男の憎しみはもう少しで女に飛びかかろうかというところまで増大していた。既の所で女性は立ち上がり、降車した。
列車は、なおも走り続けた。