9 - 名前が出りゅ!出りゅよ! (sage) 2014/07/31(木) 12:24:41 ID:pY8h6I8w
塀につたって歩いていくとやがて門扉に行き着いた。
鉄の重厚そうな扉であり、扉の間からは屋敷がみえる。
華族たちが集ってダンスパーティーをしていると言われても納得するほどの立派な屋敷である。
森氏は、自分の住んでいるところからそう遠くない場所にこのような立派な屋敷が存在していたことに驚きしばらくぼうっと眺めていた。
そうするうちに森氏はその辺りに何とも言えないいい香りがすることに気がつく。
いい香りは森氏の食欲を存分に刺激した。
この香りはどうやら屋敷の方からするようである。
まだ仕事終わり、飯を食べてはいなかった森氏は、どうしてもいてもたってもいられなくなり
その香りにつられ思わず門扉を開けようと手をかけた。
今思えばこれは幸いであったのだが、門は閉ざされ開くことはなかった。
森氏は我に返り、自分は一体なにを分別を失っているのだと思い恥ずかしくなった。
しかしそれほどに、その香りは魅力的であったのだ。
この日はとりあえず、その屋敷を去ったのだが、あの香りの正体がなんであったのかどうしても知りたくてたまらなくなった。
翌日、会社に行き同僚の一人にこの話を森氏がしたところ、彼は大いに興味を持った。
この同僚は岩村と言うのだが、このようなよくわからぬことに首を突っ込んでしまいたくなる性分であったのだ。
「やあ森、君のいうその屋敷に行ってみようじゃないか。
いいにおいがするということは旨い料理があるということだろ。
もしかしたらその屋敷っていうのは西洋料理屋なのかもしれん。
そうだったらそこで飯をくおうではないか」
岩村のこの言葉に誘われて、森は屋敷に再びいくことにしたのだが、
ここから人のおぞましさや奇怪さをとくと味わうことになる恐ろしい事件が始まるのである。
(次号へ続く)