蛆縞人肉 (89)

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18 - 名前が出りゅ!出りゅよ! (sage) 2014/08/08(金) 14:48:57 ID:YPLJuMo2

二人は塀の割れ目から中へと忍び込みあたりを見渡してみる。
大きい屋敷の割には庭の草木は手入れをされていないようである。
「ここには人は住んでいないのかしらん」
森がそんな疑問をふとつぶやくと岩村が応える。
「だったらこのにおいはなんだというのだ。
まさか自然物を放っておいてこんないいにおいがするわけじゃあないだろ」
「うむ確かにそうだ」
そして森はふと屋敷の一室に灯がちらちらと蠢いていることに気がつく。
「岩村、見たまえ。あそこに光が見えるぞ」
森が指差すと岩村もそちらの方を見て、声を上げる。
「あっ、本当だ。あちらに行ってみよう」
そういうと岩村は森が止める間もなく、屋敷の角に当たる一室、灯のちらつく部屋へ近づいてゆく。
どうやら窓からこっそりと中を覗く算段であるらしい。
森は流石にその後をついて屋敷に近づく勇気はなかった。
灯が付いているということは中に人がいるということであり見つかるかもしれぬのだ。
そもそもあの部屋にこのにおいの正体があるとも限らぬ。
そんな考えが森に躊躇の念を起こさせたのであった。
一方、岩村は身を少しかがめつつ小走りで窓に近づく。
窓の中をゆっくりと、かつこっそりと覗くようにしたときであった。
その窓がいきなり開いたのである。
森は思わずあっという吃驚の声をあげ近くに立つ木に身を隠した。
しかし岩村は間に合わない。ついに住人に見つかったのである。
岩村は身をのけぞるようにして窓から離れるようとする。しかし、なんと窓から中の住人が身を乗り出しそんな岩村の体を両腕で掴んだ。
岩村はじたばたと抵抗し何事かを叫ぶが、住人に引っ張られ、ああ、部屋の中へと引きずり込まれてしまった。
窓はぴしりと閉じられ灯は消えた。
森はこの光景にあっけにとられ岩村を助けに行くこともできなかった。
窓が開き中の住人が岩村を引きずり込んだという光景も恐ろしかったのだが、
何よりも恐ろしかったのはその住人の見た目である。
森は初めはその住人が全身に包帯を巻いているのかと思った。なぜならば、その人物が頭から真っ白であったからである。
しかし次第にそれは違うということがわかった。
模様がうようよと蠢いていたのだ!
包帯ではない!なぜならば包帯は蠢くことはない!
あれは、ああなんと恐ろしいことに、蛆である!蛆が蠢いていたのだ!
住人は蛆を全身に纏っていたのだ! そして、森の友人岩村を部屋の中へと呑み込んだのである!
この怪奇の現象に森は身が震え、何もできず立ち尽くす事しかできなかった。

(次号へ続く)