17 - 名前が出りゅ!出りゅよ! (sage) 2014/08/08(金) 14:21:42 ID:YPLJuMo2
森は岩村を連れ、かの屋敷の建っているところまで連れて行った
「ほお、立派な屋敷じゃないか。
これじゃ住んでいる奴はよっぽどの金持ちだろうね」
岩村はそんなことを言いながら門扉の前からその屋敷を見ていたのだが
不意にこのようなことを提案した。
「せっかく来たのだから入ってみよう」
これには森もいささか驚きを覚え、岩村をたしなめる。
森も入ってみようと一度は思ったのだから、岩村にとやかくいう道理はないかもしれないが
しかし実際に入るとなると問題があるだろうと考えたのであった。
ところが岩村は森の言葉には耳を貸さず門を掴んでガチャガチャと動かし始めたではないか。
「おい岩村、それはまずいよ。勝手に入ってしまったら犯罪になるだろう」
「構うものか。これだけいいにおいをしている方が悪いのだろう」
岩村は門がどうやら開かないようだと知ると、あたりの塀を物色し始める。
森は、いけないことだとは思いながらもどうしても気になる気持ちに抗うことができず、
そんな岩村を制止することもなくぼうっと眺めていた。
果たして岩村は塀の一部に人一人が何とかして入り込むことのできそうな隙間を見つけた。
「おい森、見たまえ。ここに隙間があるぞ。ここから入ってみようじゃないか」
「何を言っているんだ。これで入ったら我々は完全な犯罪者になってしまう。
不法侵入だのそんな名前の罪になってお縄だよ」
「しかしだよ君。このにおいの正体を確かめることなく帰って良いのかい?
見つかったら迷ったとでも言えばいいさ」
森はこの岩村の言葉に負け、ついにその屋敷の庭へと入る決心をした。
この時はまだ、せいぜい住人に見つかっても怒られる程度にしかならぬだろうと高を括っていたのだ。
(続く)