蛆縞人肉 (89)

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1 - 名前が出りゅ!出りゅよ! 2014/07/29(火) 18:59:02 ID:LBtcSyqw

読者諸氏へ

女はその外見を小奇麗に化粧し、自分たちは男のような汚い獣とは違うのだと言わんばかりの顔をして歩いておる。
しかし、その実、女というもののほうがより獣であったりするのだ。
男は金と地位とを求め、これは歳をとるにつれて増大していく。
ところが女が求めるのは美であり、悲しい哉、これは皺が一本また一本と
体中の皮膚に刻印されていくにしたがって自然と減衰していくのだ。
ここに女の獣的本性が発露される。
美のために発狂をし、いかなる手段を用いてでもその美を保ち、
のみならずより美しくあらんとする女もいる。
生来その彼女が美しければこの試みもうまくゆくであろう。
ところが、眉目醜悪なる怪女がこれをなさんとしても、行き着く先は破滅でしかない。
西洋から伝来した写真術を駆使し、なんとか写真の上では美しくいようとする程度であればまだよい。
古今東西を問わず、人間の世界には醜く落ちぶれた女が処女の生血を吸い、美しさを取り戻そうとする伝説がある。
彼女たちは自らの美のために、その理性を失い、獣道に落ちてゆくのである。
今回描くのは、やはり己の醜さのために発狂をした女である。
そしてこの女も、伝説上の数多の女達と同じように美を血に求めてゆく。
女というものはまったく何をするかわからぬ。
一日前までは友人のような顔をしていても、ひょいと気づいてみれば、
その友人の首と手首とを鋸で切り落とし、腹を開いてみるといったことも平気な顔でするのだ。
これは男には真似できない。
なんとなれば男というのは元来臆病な存在であり、日頃は出来る限りにうんと虚勢を張っているだけであるからだ。
奇怪にして奇天烈な、女の美への執念をとくとその目に焼き付けるがよい。
そしてその執念の哀れな餌食になるのは、決まって男なのである。

―江戸川珍歩

(続く)