4 - 名前が出りゅ!出りゅよ! 2014/07/17(木) 19:06:44 ID:lafpfr2.
途端聞きなれない車内放送が響く。
「次は〜、カラサワ〜、唐澤でェございまあす」やけに甲高い車掌の声もそうだが、唐澤なんて駅名は聞いたことがない。いよいよもって私は恐怖の戦慄を覚えたのだ。
実はかつて私はインターネット上で「あるはずのない駅に着く」という都市伝説を耳にしたことがある。あの話が有名になった途端各地で似たような目撃証言が相次いだ為に眉唾ものだとばかり思っていた。
スピードを落とす車両の窓の外から荒れ果てた駅のホームが見えてきた。コンクリートは軒並みひび割れており、すき間からは茶色く枯れた猫じゃらしが風に頼りなく揺られている。蛍光灯も切れかけているのかチカチカと点滅している。都内であるはずなのに、周りは雑木林に囲まれている。駅の向かいには小さな山、そしてどこかに用水路でもあるのだろうか、チョロチョロと水の流れる音が微かに聞こえてくる。停車し、ドアが開く。やけにジメジメとした風がふわりと入ってくる。この駅に降りてはいけない!と無意識の内に感じたのだろうか、体が硬直してしまい動けない。もちろん私だって降りるつもりは毛頭ない。このまま車内で待機していればいずれ電車は出発するはずだ。
しかし無情にも電車は動かない。まるで私が降りるのを待っているかのように。
頑として動かない私に対する警告だろうか、突然車内の電気が一斉に消えた。完全に不意をつかれた私は飛び上がり、ドアの外へと出てしまった。途端にドアがしまり、すぐに電車は走り去った。この暗い駅に、私は取り残されてしまったのだ。