夜行バス (52)

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16 - 名前が出りゅ!出りゅよ! (sage) 2014/07/14(月) 12:01:37 ID:RVVjCY1c

今日は司法研修所の送別会、幹事の俺は仲間と最高の別れをしようと張り切っていた。
準備は順調に進み、開始時刻となり参加者が全員席に着いた所で乾杯の音頭を取ろうとしたその時「ちょっと幹事ー!一人足りないんじゃないのー!」
そんなはずはない、さっき全員の顔を確認したはずなのに。半ば疑いながら人数を数えてみると確かに一人足りなかった。
慌てて参加者名簿を確認すると、唐沢貴洋という名前を見つけ軽く舌打ちをした。なんだあいつ来んのかよ、幹事として絶対に言ってはいけない言葉が思わず口から出てしまった。
正直言って来て欲しくない奴だった。どうやらこの感情が参加者を確認する際に無意識に奴の名前を脳内から消したようだ。
幹事である以上、いくら来て欲しくない奴とはいえ全員が揃わないのに会を始めるわけにはいかない。あまり気の進まないまま唐沢貴洋の携帯に電話を掛けると予想外の声が返ってきた。
「もしもし、ああちょうどいい所だ!あんたが九州の同期の弁護士さん?」
その声は40歳を少し超えた位の初老の男性の声だった。ほとんど唐沢貴洋と会話した事がなかったとはいえ、この声があいつの声でない事位はわかる。
状況がよく理解できないまま、俺ははいそうですがと返答した。
「おたくの弁護士がバスの中で派手にまき散らかしましてね、バスがダメになっちまったんですよ。本人はその後もポテトを食ってるだけだし
父親に電話を掛けてもつながらないし。なので弁護士さん、申し訳ないんですがバスの修理費弁償してもらってもいいですかね?」
順風だった俺の司法研修所の思い出が全て真っ暗になった。

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