1 - 名前が出りゅ!出りゅよ! 2014/06/12(木) 01:06:32 ID:n29b11is
降り続く雨。
景色の全てがモノクロームに見える中、灯りで橙に彩られた窓には、二つの影が映っていた。
影の正体の一つは、紺色のスーツに身を包んだ肥えた男だった。その下にパジャマのようによれた水色のストライプのワイシャツを着ている。
もう一つは若い短髪の青年。やはりスーツを着ているが、前述の男よりは色が薄い。ワイシャツは無地で、4月のオフィス街を歩けばごまんと見かけるであろう風貌の男であった。
およそ一般的な見識を持つ者ならば、この二人の関係性を見破ることはできないだろう。上司と部下、一見するとそう見えなくもないが、その実彼らは全く別の職業に就いているのである。
肥えた男は弁護士をしている。収入は芳しくないが、元々高名な家の生まれだったこともあり生活には苦労していない。二人がいる建物も彼の自宅である。
もう一人は地方に住むごく一般的なサラリーマン。どこに勤めているのか、歳はいくつなのか、それはわからない。ただ青年は、弁護士の男に向かってしきりに声をかけていた。
「先生!!!!!どうかお願いします恒心を!!!!!!!我々の声なき声に力を与えてください!!!!!!」
肥えた弁護士は、満足そうにそれを聴いていたが、口は閉ざしたままであった。
青年はしばらく弁護士に言葉をかけると、静かに立ち去って行った。
外は相変わらず、雨が降り続いていた。