暗黒庭園 (92)

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77 - 名前が出りゅ!出りゅよ! 2014/06/07(土) 01:13:10 ID:QDkwLSms

「さあ、発進しなさい」
山内刑事が、運転席に座る警官に命令します。しかし、なぜかそれを先生が止めます。
「いや、自動車を出す必要はないよ」
これには厚史少年も驚き、後ろを振り返り言います。
「ええ、どういうことですか、賊を捕まえないと」
「はは、賊だったらもう捕まえているんだよ」
「え、それはつまり」
唐澤先生は素早く身を翻すと、隣に座っていた山内刑事の腕を取り、身動きを奪います。
「同じ手を何回使うつもりなんだい、君は」
ぎりぎりとだんだん力を込め、山内刑事を自動車の後部座席の上に倒してしまったではないですか。
「先生、まさかその山内刑事が」
「ああ、そうさ、こいつが賊さ、暗黒弁護士なのさ。
さあ、君たちも手伝ってくれたまえ」
それを聞いて厚史少年と運転席の警官は、一旦自動車からおります。
三人がかりで、暗黒弁護士扮する山内刑事を車外に引きずり出すと、先生の持っていた縄で縛り上げてしまいます。
「そのまま逃げていればよかったのに、君もずいぶんとプライドのたかい人間なんだね」
そう語りかける唐澤先生を、賊は下から睨みつけます。
「ふん、そのまま逃げるなんてことができるか。
まんまとしてやられて、そのままずらかることができるほど脳天気じゃないんだよ。
一杯食わせて、お前の自信をくじいてやろうと思ったのさ」
もう暗黒弁護士は抵抗しませんでした。いえ、むしろ捕まったにもかかわらず清々しい表情をしているではないですか。
「気球にはダミーの人形かなにかをいれ、そして山内刑事と入れ替わったんだろう」
「ああ、そうだ。後ろから薬品をかがせてやったらすぐあの野郎は眠っちまったぜ。へへへ」
ついにやったのです。唐澤先生は、少年少女、そしてその親御さんたちを恐怖させた暗黒弁護士を今捕まえてみせたのです。
運転手にした警官に頼んで応援の警察官や車両を呼んできてもらいました。
続々と警官たちが集まり、その中にはぼーっとした様子の山内刑事もいました。
たくさんの警察官に囲まれ、暗黒弁護士は警察へと連れて行かれます。
もう、みなさんのような可愛らしい少年少女が怯えることはなくなったのです。
警察車両へと賊が乗せられるそのとき、唐澤先生は暗黒弁護士に話しかけます。
「このまま君は逮捕だ。君の暗黒弁護士としての野望はここで潰えたのだよ」
これに暗黒弁護士は答えます。
「へっ、まあしかたないな。俺は、あんたに捕まってよかったかもな」
そう答えると、賊はパトカーに乗せられどんどんと遠ざかって行きました。
これで、事件は終わったのです。

(続く)