暗黒庭園 (92)

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60 - 名前が出りゅ!出りゅよ! 2014/05/30(金) 23:48:28 ID:DQQgEpAE

左手をギュッとおさえて、必死の形相をしている暗黒弁護士に向かって、
先生は一体どうやって入れ替わることが出来たのかを説明し始めます。
「まずおかしいと思ったのは、あの屋敷にいったときだ。
君たちはあの日、外に出て周りがどんな様子か確認したかい。
していないだろう。あの日は雨が降ったんだ、それで地面がぬかるんでいた。
僕達と、それから山内刑事をはじめとする警官隊はみんなその泥を通ったはずなんだ」
確かにそうだったはずです。それは私たちも知っています。
そういえば、山内刑事が泥に汚れるのが嫌だのなんだのと言っていたではないですか。
しかし、それがどう関係するのでしょうか。
「屋敷に入りお前がいないことに気がついた我々は捜索を始めた。
そこでおかしいと思ったんだ。もう分かるだろ。
そうだ、靴だよ靴。
あそこにいる警官隊はみんな泥で靴が汚れているはずなのに、
二人だけきれいな靴を履いた警官がいたのさ。
それがお前らというわけだ。
その内の一人を気付かれないように呼び出して、尋問を行い色々と聞き出したというわけさ。
変装道具はいつも携帯しているし、変声術もできるからね、なりかわるのは簡単だったよ」
なんと、そんなからくりがあったのでした。流石は先生です。
この言葉を聞いて暗黒弁護士はたいそう悔しがります。
「ふん、そんなことだったのか。くそ、まんまとはめられたもんだ。
だがな、このまま捕まえることができるなんて思うなよ」
そう言うと暗黒弁護士は何歩か後じさりをします。
そして、足を急に動かして地面を蹴ったではないですか。
その瞬間、部屋がぱっと明るくなります。とてもまぶしくなります。
どうやら、電灯のスイッチのようなものが床に仕込んであって、それを作動させたようです。
先生と厚史少年はその眩しさにたまらず目をつぶり、うずくまってしまいます。
みなさんもトンネルから普通の道路に出た時に、眩しくてたまらなくなったことがあるのではないでしょうか。
人間の瞳には瞳孔というものがあり、暗い時は大きく膨らんで光を沢山うけようとし、
明るい時は小さく絞って光を少なく受けようとするのです。
ですから、暗いところか明るいところへいきなり行くと、この調整が追いつかず目が一時的に眩んでしまうのです。
暗黒弁護士はこの人体の現象を利用したのです。
賊は黒メガネを素早く装着し、部屋の隅へと走り寄っていきます。
そこで何やら操作すると一本の縄ばしごが出てきます。
左手を怪我しているのでおぼつきませんが、それでもたいへんな速度でスルリスルリと上っていきます。
この辺りになって、やっと目が慣れた先生と厚史少年は賊を追いかけるために走り出します。
「やいっ、逃すとと思うか」
厚史少年が賊に向かって叫びます。
賊がもう少しで天井に届こうというときに、先生が、続いて厚史少年が飛びつきます。
二人の運動神経というのは大変なものですから、目にも留まらぬ速度で縄ばしごをするするするすると上っていきます。
その様子はまるで、蜘蛛が自分の巣を我が物顔で闊歩するかのようではないですか。
しかし、二人が追いつくよりも賊が天井に届き、なにやら扉のようなものを開けるのが先です。
その扉からさっと賊は飛び出していきます。
いくらか送れて先生と厚史少年がそれに続いて飛び出します。
そこは林のようなところでした。
ここで、賊と先生、そして厚史少年の大捕り物がはじまるのです。

(次号へ続く)