58 - 名前が出りゅ!出りゅよ! 2014/05/30(金) 23:31:11 ID:DQQgEpAE
「ああ、くそ、くそ」
暗黒弁護士は苦しそうにうめき声をあげながら倒れています。
薄暗い光のなかで、左手を抑えているのがぼんやりと見えます。
どうやら左手を撃たれたようです。血も流れているようです。
「どうして私を撃ったのだ」
暗黒弁護士は左手を抑えながらゆっくりと立ち上がり、
自分を撃ったもう一人の賊に威嚇するように怒鳴りつけます。
厚史少年は今何が起こっているのかわかりませんでした。
もう自分はこの賊たちによって殺されるのだと覚悟をしていたのですから当然です。
恐怖のあまり固く握りしめた拳には、自分の爪の跡がくっきりと残っている程でした。
どうしてこの賊は自分を撃たなかったのだろう。
そして、どうしてこの賊は仲間であるはずの暗黒弁護士を撃ったのだろう。
そんな疑問が厚史少年の頭の中をめぐります。
「おい、なんとかいったらどうだ。貴様、こんなことをして」
暗黒弁護士は依然として仲間に向かって怒鳴っています。
厚史少年は考えます。
もしやこれは絶好の機会ではないかしらん。
仲間割れをしているこのすきを突けば逃げることができるかもしれない。
しかし、厚史少年のこの考えも次の瞬間消えてなくなります。
暗黒弁護士を撃った賊のもう一人が、厚史少年の肩に手を置いてこういったのです。
「ごめんね、厚史くん。怖かったろう。でももう安心したまえ」
「その声は、先生じゃあないですか」
そうです、なんと暗黒弁護士を撃ったあの賊は唐澤先生だったのです。
賊は、いや先生は、あの優しい語り方で厚史少年に話しかけます。
「よくここまで我慢したね、さすが私の助手だ」
このやりとりを暗黒弁護士が黙ってみているわけがありません。
「なんだと、一体どうなってるんだ。なんで、なんで」
暗黒弁護士の疑問ももっともです。
いったい、いつの間に先生は賊と入れ替わることができたのでしょうか。
先生は不敵に笑いながら暗黒弁護士に向かって言い放ちます。
「だったら教えてあげるよ。いかに君たちが無能だったかをね」
(続く)