46 - 名前が出りゅ!出りゅよ! 2014/05/26(月) 21:38:08 ID:j8mWufJs
厚史少年が縛られ、自動車に乗せられ出発してからどれくらい経ったでしょうか。
この間、厚史少年はずっと、この状況からどうやって抜けだそうか考えていました。
しかしうまい案は思い浮かびません。
相手は大人二人です。服の中に隠した道具も、山内刑事たちと合流した時においてきてしまいました。
唐澤先生に居場所を知らせようにもその手段がありません。
隙を見て逃げるしかないのですが、その隙を果たして賊が見せてくれるかどうかです。
それでも、少なくとも今は無理そうです。
賊は運転席でハンドルを握り運転を続け、もう一人の男は厚史少年の隣で拳銃を突きつけながら
頭ともう片手とを時たま窓から出し、相変わらず尾行がないかどうか探っているようです。
困ったことになったぞ。厚史少年は自分の置かれた状況を理解しました。
ですが、恐怖や心配は全く感じていません。
そうです、厚史少年には唐澤先生がついているではないですか。
先生が絶対に助けに来てくれる、そう厚史少年は信じているのです。
厚史少年は考えます。
今頃、先生は僕がいなくなったことに気がついて、うまい手を考えてるはずだ。
そして山内刑事やその部下に何かしら命令して、僕を追いかけさせているに違いない。
それはもうすぐ、僕とこの賊に追いつくだろう。
そう考えているのです。
ああ、しかし、私たちは知っていますが、唐澤先生までもがどこかに姿を消してしまったことを厚史少年は知らないのです。
賊に捕まっている、とはあの唐澤先生のことですから、ないはずだと信じたいです。
しかし、いなくなってしまったのは事実なのです。
そんなことを厚史少年は知らないものですから、まだ油断をしているのです。
そうこうするうちに自動車の速度は少しずつ緩まり、停車しました。
「さあ、降りろ。案内してやる」
暗黒弁護士は厚史少年を縛っている縄を足だけほどくと、乱暴に自動車からおろします。
そして、ぐいぐいと引っ張ってどこかへ連れて行こうとするのです。
「さあ、この階段を降りろ」
地面を掘るような形で階段があり下へ続いています。
逆らうことも出来ないまま、厚史少年は連れて行かれます。
しばらく降りると頑丈そうな扉がありました。
暗黒弁護士が鍵を取り出しその扉を開けます。
「ようこそ厚史くん。『暗黒庭園』へ」
賊は不気味に笑いながらその扉の中へ厚史少年を引き入れ扉を閉めます。
もう、厚史少年は逃げられなくなりました。
地下の部屋で大の大人二人に囲まれ、手も縛られているのです。
そして、厚史少年はここ、暗黒庭園で世にも恐ろしい光景を目にすることになるのです。
(続く)