32 - 名前が出りゅ!出りゅよ! 2014/05/19(月) 22:39:05 ID:CbmCJhws
「あの中に賊は捕らえられているのかい」
「はい先生。ちゃんと縛ってあるので逃げられないはずですよ」
唐澤先生が厚史少年に話しかけると、嬉しそうに報告します。
「いやあ、それにしてもひどい泥ですね。これじゃ靴がグチャグチャになってしまいますな」
山内刑事がベチャベチャと音を立てながら、泥の中を歩いていきます。
「ははは。まあそれくらいは君たち警察のいつもじゃないかね」
「まあそうですな。足で稼ぐのが我々警察官でありますからなあ。
おや先生。そんなかばんをもってどうしたのですか。
賊はもう縛ってあるんですから心配無用ですよ」
山内刑事が、先生の持っているかばんに気が付き尋ねます。
「これは仕事道具ですからね。持ち運ばないと気が気でないんですよ」
「私にとっての手帳と手錠みたいなものですかね」
「ああそうですね」
そんな会話をしていると、不意に先生は厚史少年に質問します。
「賊を捕らえたといったがそんな簡単にできたのかい?」
「ええ、そうですね。唐辛子粉をかぶっているので抵抗できなかったのでしょう」
それを聞いて、ふむと先生は考え始めました。
「なにか嫌な予感がするね。抵抗しなかったのは君を油断させるためだったのかもしれない」
「えっ。先生、それは一体どういう意味ですか」
「とにかく早いところ捕らえた部屋に行ってみようじゃないか」
制服の警官も引き連れた一行は、賊の倒れている部屋に急ぎます。
しかし、部屋の前に来た時に厚史少年は叫び声をあげました。
「あっ。部屋の扉が開いている。僕は確かに鍵を閉めたのに」
それを聞いた唐澤先生は、バッと部屋に飛び込みました。
しかし、ああ、なんということでしょうか。
そこには暗黒弁護士はいなかったのです。
賊を縛った縄が切断されて打ち捨てられているだけではないですか。
「どうやら賊は一人じゃなかったということだね」
「ああ、そんな。僕の完全な油断です」
厚史少年は落胆し、自分の失敗を悔やんでいます。
「しかしまだ遠くにはいけないはずだ。この屋敷を探そう」
唐澤先生はすぐに思考を切り替え、賊の捜索を決意します。
無事、賊をひっとらえることはできるのでしょうか。
(続く)