暗黒庭園 (92)

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28 - 名前が出りゅ!出りゅよ! 2014/05/16(金) 18:40:43 ID:4lo.vv4s

厚史少年達が閉じ込めらていた部屋のある屋敷は存外に広く、また鍵があちらこちらにかかっていたため
屋敷の外にでるのに多少の時間は要したものの、みんな揃って脱出に成功することができました。
「さあ、あっちだよ」
厚史少年は、ある方向を指さしながらみんなを先導していきます。
おそらく数時間前に雨が降ったのでしょう、地面はぬかるんでいて、少し足が取られます。
しかし、閉じ込められていた子供達にとって、この泥に足を取られる感覚は懐かしく、
わざと強く泥に足を振り下ろしてはきゃっきゃとはしゃぐ男の子までいました。
「でもね、厚史くん。一体どうやって家まで帰るんだい。脱出は出来たけど、ここからが難儀だよ」
亮太くんが厚史少年に尋ねます。
「それだったら大丈夫だよ。迎えを呼んでいるからね」
「迎えだって」
「そうさ。僕が鳩に手紙を持たせて放ったことを覚えているかい」
「ああそういえばそんなことがあったね。何をしていたんだい」
「鳩ってのはね、自分の巣に必ず戻る性質があるんだ。それを使って手紙をある人に届けたってわけさ」
「ある人って誰なんだい」
「警視庁の山内刑事さ。彼にここの場所を知らせて、急いで迎えに来るように頼んだのさ。
鳩が届けるのに必要な時間と、そこから車を走らせる時間を計算して僕は魔法を披露したってわけさ。
もう迎えは来ているはずだよ」
山内刑事というのは、唐澤先生も度々お世話になっている刑事さんです。
少々抜けているところはありますが正義感は人一倍で、力もうんと強く頼りになります。
厚史少年は、あの伝書鳩を使ってその山内刑事に居場所を知らせたというのです。
みんながしばらく進むと、パッと目の前が明るくなります。
車のヘッドライトがついたのです。何台も車が並び、制服を着たおまわりさんがたくさんいます。
「おお、厚史くん。良かった無事だったんだね」
「山内刑事、ありがとうございます。さて、みんなは無事なのでお父さんお母さんのもとへ送ってやってください」
「ああそれは警察がちゃんとやってあげるよ」
「賊はあの屋敷の中で縛ってあるので、僕が案内しますね」
「それは助かる。さすが厚史くんだ。そうだそうだ、厚史くん、頼れる人が一人到着したよ」
そう山内刑事がいうと、一台の車の中から笑顔のよく似合う男が出てきました。
厚史少年の顔も明るくなります。
「ああ、先生。お帰りだったんですか」
そうです、この人こそ、あの名探偵唐澤洋先生なのです。
「案外はやく事件が解決したもんでね、急いで帰ってきたんだよ。
今回はだいぶ大手柄みたいじゃないか。えらいよ」
先生に褒められて厚史少年は、えへへと照れます。
こういうところには少年らしさが残っているのです。
「さて、じゃあ賊を捕まえに行こうじゃないか」
先生を先頭にして厚史少年、山内刑事と続き、何人かの制服の警官がそのあとに従います。
さて、このまま暗黒弁護士はあっさりと捕まってしまうのでしょうか。
厚史少年の見事大手柄で事件は終了するのでしょうか。

(次号へ続く)