22 - 名前が出りゅ!出りゅよ! 2014/05/14(水) 22:14:34 ID:BQozZYgU
厚史少年がなにやら用意をし始めてから、30分ほどが経ったでしょうか。
部屋の外からカツーンカツーンと靴音が聞こえます。
それと一緒にガラガラと台車を転がす音も聞こえます。
暗黒弁護士がご飯を持ってきたのでしょう。
みんなの顔がにわかに明るくなります。
無理もありません。ご飯というのは暗い気持ちを吹き飛ばすものなのですから。
その時です。誰かがおかしなことに気が付きます。
「お、おい。なんだこのにおいは」
においとは一体なんのことでしょうか。
それに呼応するかのように、他のみんなもなにかに気が付きます。
「本当だ。なんだか焦げ臭いぞ。どうなってるんだ」
「ややっ。お、おい、これは煙じゃないか」
なんと、部屋には煙が漂っているではないですか。
「おい、まさか火事なんじゃないだろうな」
誰かがそう叫ぶと、少しずつみんなパニックになってきました。
「あっ、あれは火だ。火が上がっているぞ」
部屋の片隅で赤く炎が上がっていることに誰かが気づきます。
こうなるともう騒ぎは抑えられません。
「大変だ。火事だ。燃えている。焼け死んでしまう」
みんな、口々にそう叫びながら部屋の扉をどんどんとたたきます。
部屋の扉の前には、暗黒弁護士が近づいているわけですから、この騒ぎに気づきます。
パタパタと駆け寄る足音が聞こえると、扉の外から声がかけられます。
「おいどうした。火事だって。本当か」
暗黒弁護士が尋ねます。
「本当だよ。大変だ。助けてくれよ」
みんな、どんどんと扉をたたきます。
「ああ。扉の隙間から煙が出ている。どうやら本当の火事のようだ。
しかし一体どうして。くそったれ。ええい、とにかく扉を開けるからこちらに避難しろ。
それでも私のいうことは聞くのだぞ」
暗黒弁護士はそう言いながら鍵をカチャリとあけ、扉を開きます。
みんな、火事の恐怖で泣いています。
おや、しかしどうしたことでしょうか。
厚史少年だけは、なんだかニヤリと笑いながら立っているではないですか。
そうして、開きつつある扉を見つめているではないですか。
手になにやらもっています。
ああっ。厚史少年の言う「魔法」とは、そう、これだったのです。
火事こそ、その魔法の正体だったのです。
このあと一体どうなるのでしょう。
(次号へ続く)