2 - 名前が出りゅ!出りゅよ! 2014/05/05(月) 18:56:44 ID:aDzCIQzQ
東京、虎ノ門。まだガス燈も引かれていないこの地域に、唐澤先生の事務所はあります。
先生は皆さんもご存知の数々の難事件を解決したということで名探偵として有名です。
ですから、そんな先生のもとに今回の暗黒弁護士の事件についての相談がくる、というのは自然なことです。
今も事務所の応接室、イギリスからの舶来品であるフカフカとしたソファーに
一人不安そうな顔をした男の人が座っています。
口ひげをたっぷりとたくわえ、体格もガッシリとしていて、
見るからにお金持ちと分かります。
ですが、パイプを吸う手も少し震え、一目見ただけでどこか動揺していることがわかるではないですか。
「長谷川さん、おたくの亮太くんが昨日の夕方からいなくなり、
今朝ポストに暗黒弁護士からの手紙が投函されていたということでいいですね?」
やはり、この紳士は暗黒弁護士の事件を先生に相談しに来ているようです。
そして、どうやらその名前は長谷川さんといい、誘拐された子供の名前は亮太くんというようです。
しかし、そんな長谷川さんに話しかけているのは先生ではありません。
ほっぺたがりんごのように赤い一人の少年です。おやおや、一体どうしたのでしょうか。
「ええ、まあそうなんでが……。あの、唐澤先生はいらっしゃらないんですか」
長谷川氏も不安になって、この少年に尋ねています。
「はい、先生は伊豆の方で事件ということで、おとついから汽車に乗ってでかけております。
あ、申し遅れました。僕、先生の助手をやっている厚史というものです。
先生が留守の間、事務所のことは全部僕に任せると言われております。
ですからご安心ください」
この少年こそが、先生の弟子として名高い厚史少年だったのです。
しかし、長谷川氏もやはり不安のようです。
「はあ。ですが厚史さんもうちの子と同じ年くらいだ。
すこしだけ、心配があるのですが」
「ははーん。僕が子供だと思って見くびっているわけですね」
「いえいえ、決してそんなことは」
長谷川氏は少し慌てた様子でこれを否定します。
「まあ、任せてください。子供には子供なりのやり方というのがあるんですよ」
「子供なりのやり方ですか」
そして、厚史少年は彼の考えている作戦を話し始めます。
それは、長谷川氏にとって驚くべきものでした。
そして、やはりあの唐澤先生の助手だと思わせるものだったのです。
(次号に続く)