11 - 名前が出りゅ!出りゅよ! 2014/05/07(水) 17:26:21 ID:4LOgmXtY
千尋ちゃんを乗せた自動車が出発してからどれくらいがたったでしょうか。
デコボコとした道を進み、その間も千尋ちゃんはじっとしていましたが、
やがて自動車の速度は落とされ完全に停車しました。
目隠しをしていてもはっきりと分かるほど西日がジリジリと千尋ちゃんの顔をやいています。
暗黒弁護士は千尋ちゃんの足の縄だけを解き、強引に自動車からおろし、話しかけます。
「さあついてきなさい。みんなも待っているからね」
そういうと、まだ解いていない千尋ちゃんの腕を持ってぐいぐいと引っ張りどこかへ連れて行こうとします。
それにしても、みんなとは一体誰のことなのでしょうか。
もしかしたら、暗黒弁護士にさらわれてしまった他の子供たちのことなのかもしれません。
千尋ちゃんは黙って暗黒弁護士の言うとおりにします。恐怖で逆らう勇気なんてないのかもしれません。
「さあついた。しばらくここにいなさい」
どうやら、どこかの部屋についたようです。
「ここでしばらくじっとしているんだ」
そういうと暗黒弁護士は千尋ちゃんの目隠しと腕の縄を解き、部屋を出ていきます。
ガチャリという鍵のかかる音が聞こえます。
千尋ちゃんはあたりをキョロキョロと見回します。
なんということでしょうか。
その部屋はだいたいみなさんの通っている学校の教室と同じくらいの大きさなのですが、
そこには十人以上の千尋ちゃんと同じ年頃の子供達がいるではないですか。
やはり暗黒弁護士にさらわれた子供達が集められている部屋だったのです。
どの子もみんな下を向いて悲しそうにしています。当然のことです。
みなさんも、愛するお父さんやお母さんのところから無理やり引き離され、どこかもしれぬところに閉じ込められたらそのような気分になることでしょう。
千尋ちゃんも悲しくて寂しくて泣き出してしまうかもしれません。
おや、しかしどうしたことでしょうか。千尋ちゃんは泣き出す様子はありません。
それどころか、少し笑っているではないですか。
一体どうしたのでしょう。恐怖と哀しみで気が触れてしまったのでしょうか。
千尋ちゃんは部屋をキョロキョロと見回した後、ニッコリと笑い1人の少年のもとへ駆け寄ります。
その少年も下を向いて悲しげにしています。
しかし、千尋ちゃんは笑顔でその男の子に話しかけるのです。
「助けに来たよ。長谷川亮太くん」
(続く)