1 - 名前が出りゅ!出りゅよ! 2014/04/25(金) 01:20:12 ID:3JfS5oW.
『壷』
桜が散るか散らないかという頃のこと、H氏は散歩をし街の中央にある広場へとやってきた。
ここではいろいろな店が出ていて人々が行き交っており、その様子をベンチに座りながら見るのがH氏の日課だった。
いつものように腰を掛けあたりを見回すと、見慣れた店の中に初めて見る店があった。
客は誰も立ち寄っていないようで、骨董品を売っているようだ。
そこで売られている品々にすこし興味が出たH氏は冷やかすつもりで近づいてみた。
フードを深く被った男が店番をしているがH氏に気づく様子はない。
「これは何を売っておられるんですか」
H氏は話しかけてみる。
「みての通り壷ですよ」
男はH氏に気が付き答える。
「壷ですか。どうです、売れていますか」
「いやはや困ったものでこれがなかなか売れませんで」
客がいないのだから仕方がない。暇つぶしとばかり質問を続ける。
「どういった経緯の壷なんですか」
「これは悪魔を呼び出すための壷なんですよ」
「はあ、悪魔ですか」
まったく、怪しげなのを売る輩もいるもんだとH氏は思ったが、少しずつその壷に興味が出てきた。
「ちなみにおいくらなんでしょうか」
その答えは一日の食費程度で、H氏の予想に対して随分と安く拍子抜けしてしまった。
悪魔、と言う言葉を聞いていたので、その壷に対してどうしようもなく興味が出てしまい
騙されていると知りつつも購入の衝動に襲われ、最終的にその壷を買う決意をしてしまう。
「では私がいただきましょう」
「お買い上げありがとうございます。ただし、これは悪魔の壷ですから割ったりしないでください」