2 - 名前が出りゅ!出りゅよ! 2014/04/18(金) 22:35:01 ID:4YBIBESY
しかしある日洋は見てしまった。厚子に内緒で持っていったアイスを片手に、貴洋の部屋のドアをそっと開いた時であった。
貴洋がドアに背を向けて、テレビを見ていた。四角い画面では、幼い女の子達が満面の笑みで駆け回っている。無邪気な笑顔で、無垢な姿をさらしていた。
洋は少しおののいたが、しばらくして持ち直した。貴洋ももう中学生。世の中の悪い面も見えてきた頃だろう。ならば、純真無垢だった頃に浸るためにああいったDVDを見るのもしょうがない。
気を取り直した洋は、ドアを開けると、貴洋の背後に近づいていく。何食わぬ顔でアイスだけ渡してやろう。若人よ、大いに悩め。余裕をもって洋は貴洋に近づいていく。
一歩、一歩、また一歩。歩を進めるごとに洋はあることに気がついた。こちらに背を向けて座っている貴洋、その上体が微かに揺れている。それに合わせる様に繰り返される貴洋の息遣い。
洋は妙に思いながらも、そのまま貴洋の後ろに立つ。そして目の当たりにした。
貴洋の腰掛けた椅子の背もたれの向こう側、貴洋の手が、何かを握りしめて上下に振られている。その動きに絡みつく様に響き渡る水音。
「あつ、あっ、いく、いくナリ!」
画面にほころぶ無邪気な笑顔に、息子の邪気が大量に飛ぶ。画面の表面を粘液が音を立てて散っていく。
貴洋はオナニーをしていた。洋は思った。確かに貴洋も男だ。オナニーもする。夢精もする。いつかは相手も作ってセックスもするだろう。だがしかし。
洋の手元からアイスがこぼれおちる。解けたアイスが洋の手の平を伝い、指先からたれて行くが、洋は構わずその手を握りしめた。
洋は怒りに震えていた。性欲にまみれた妻からの苦しみ。日々の苦しみから逃れるひと時の憩いの場。それが偽りだったのだ。心のオアシスたる息子も、妻と同じ性欲の塊だったのだ。
その時、洋の中で何かが砕けた。
「ナリ?」
洋の握り拳から垂れたアイス、首元に落ちたその冷たさに振り向いた貴洋が見たのは、颶風の様に部屋を飛び出していく洋の姿だった。