511 - 名前が出りゅ!出りゅよ! 2015/05/28(木) 04:54:49 ID:/Si7cXuY
唐澤洋は嘆かない、愛する息子を失ってしまっても。
唐澤洋は笑わない、愛する息子を失ってしまったから。
唐澤洋は動じない、心が動くことはない。
唐澤洋は動かない、身体を動かすことはない。
唐澤洋はじっと佇んでいる。なにかを待っているのだろうか。
それは本人にもわからない。なにかを待っている、それは確かだ。
でも、なにを待っているのか、それは唐澤洋にもわからない。
待っているものがわからないけれど、とりあえず唐澤洋は待っている。
どれだけ待っても、愛する息子は戻らないと言うのに。
今、唐澤洋は久しぶりに陰茎を固くしている。犬のように、棍棒のように固くった男根は
新しい男、山岡と名乗る細身の若い――亡き息子より年下の――男前に支配されている。
貴洋が誕生して以来、貴洋のことだけを思い、貴洋のためだけに使ってきた生殖器は、
山岡と名乗る見知らぬ男の少しだけひんやりとした口腔にその全身を余すところなく包み込まれている。
唐澤洋と、山岡と、二人だけの事務所には舌と唾液と微かな摩擦音のみが響く。
「もし、口で逝かせられたら……」山岡はなにごとかを口にする、唐澤洋は喉の奥で唸る。
それは返事とも呼べない、諦めの、降参の鳴き声だった。
唐澤洋は動かない、もう自分から動く必要はないのだ。
唐澤洋は未来を思った、あと数秒後には精液を放出してしまうだろうふがいない自分自身を思い浮かべた。
そんな頭の片隅で、ふと、自分が貴洋だったら今日の晩御飯になにを食べたいだろうか、そんなことも思った。