698 - 塘懌䝿拝 2013/12/05(木) 20:15:51 ID:BhDtQA/k
一番最初、お前と飲んだときからそうだったよな。
俺が高卒フリーターで、お前が有名大法学部生だったとき、 おごってやったのが白木屋だったな。
「俺は、毎日法学の基本書読み耽ってるぜ。法学はおもしろくてしょーがないから」 お前はそういって笑ってたっけな。
俺が正社員登用されて初任給22万だったとき、
お前はロースクール1年生だったよな。
「毎晩勉強で休みもないけど、新司うかったら勝ち組なんだ」
「予備試験組は国に騙されてるようなもんだ」
「民間企業も、法務博士は即戦力として欲しがってるんだ」
そういうことを目を輝かせて語っていたのも、白○屋だったな。
あれから十年たって今、こうして、たまにお前と飲むときもやっぱり白○屋だ。
ここ何年か、こういう安い居酒屋に行くのはお前と一緒のときだけだ。 別に安い店が悪いというわけじゃないが、ここの酒は色付の汚水みたいなもんだ。
油の悪い、不衛生な料理は、毒を食っているような気がしてならない。
なあ、別に女が居る店でなくたっていい。 もう少し金を出せば、こんな残飯でなくって、本物の酒と食べ物を出す店を いくらでも知っているはずの年齢じゃないのか、俺たちは?
でも、今のお前を見ると、 お前がポケットから取り出すくしゃくしゃの千円札三枚を見ると、 俺はどうしても「もっといい店行こうぜ」って言えなくなるんだ。
お前が三振したのは聞いたよ。予備試験に歯が立たないのも知ってるよ。
新しく入った公務員予備校で、一回りも歳の違う、20代の若い奴らの中に混じっ て、 プライドだけ高い粗大ゴミ扱いされて、それでも必死に卑屈になって勉強続けているのも わかってる。
だけど、もういいだろ。
十年前と同じ白木屋で、十年前と同じ、身の丈にあわない夢を語らないでくれ。
そんなのは、隣の席で浮かれているガキどもだけに許されるなぐさめなんだよ。