791 - ゆぱー! (sage) 2016/01/04(月) 05:56:23 ID:pCewBwPw
289 無名王 2015/12/25(金) 14:39:44 ID:hJNoLxbk0
2-2-1 ネットとの出会い
彼がインターネットに出会ったのはその高校生活という緩やかな地獄の最中でした。
当時はニコニコ動画をはじめとしたゼロ年代サブカルチャーの全盛期。 その当時の彼にとって、魅力的なコンテンツやそれを生み出す人間たちと触れ合えるインターネットはまさしく魔法のツールだったでしょう。
その内彼は「空想大戦SSスレ」という二次創作をメインとした掲示板に入り浸るようになりました。 少年漫画や特撮やアニメやゲームの登場人物やガジェットが縦横無尽に同一の世界で動き回る、好きな人間は好きそうなジャンルの代物を扱う掲示板です。
彼がそこに書き込めば、そこの住人たちは驚くほど簡単に彼の言葉を受け取り、対等なコミュニケーションを取ってくれました。 小関直哉はそこで実生活では有り得ないほど饒舌に、今までできなかった深い会話を、飽きるまでできました。
そこは彼がようやく見つけた居場所ではありましたが、そこに至るまでに彼の対人関係構築能力はすでにいくつもの深い深い傷を負っていました。
一つ、他人を見下す思考が常態化してしまったこと。
一つ、身の丈に合った対等な友人を作るのが困難になっていたこと。
一つ、コミュニケーションがもはや自己顕示以外の方法では取れなくなっていたこと。
一つ、成果を得るために努力するという発想ができなくなっていたこと。
彼のことを親身に考え、対等に付き合ってくれる友人が一人でもいれば、これらは大した問題もなく治っていったかもしれません。
しかし現実にそうではない小関直哉にとって、この傷は広がる一方の致命傷でしかありませんでした。
彼がインターネット「無名の妖怪ハンター」という固定ハンドルネームを付けて空想大戦SSスレで活動を始めてからは更に症状が悪化していきます。
信じ難いことですが、ひたすら自分を見せ付ける行為が小関直哉にとっての対人コミュニケーションのほぼ全てでした。 彼のネット上での活動も基本的にそれに終始しました。
特に「無名の妖怪ハンター」名義での活動はそれが顕著に現れました。 妄想を書き殴り、若い日々を消費して娯楽作品を読み耽ってその感想を書き殴り、異常なほどの超長文を書き連ねてスレッドに投下しました。
一方で小関直哉はWikipediaやニコニコ大百科といったユーザー編集型の百科事典系サイトの編集も始めていました。 彼の編集したものを皆が読んでいくのですから小関直哉にとっては自分の遺伝子が撒き散らされるような快感を覚えたことでしょう。
しかし彼には百科事典系サイトに深く関われるほどに何かに長けた知識があった訳でもなければ、他人に見せることを意識して筆力を磨いた訳でもありませんでした。
ただただ自己の顕示の為に行動していた為に他者への共感に欠け、ミステリー小説のネタバレを載せることに固執してレスバトルを引き起こすこともありました。