570 - 唐睾睾睾 2014/01/09(木) 18:38:01 ID:.jMEx8/.0
7 争点6(被告らが原告に対して支払うべき遅延損害金の額)について
被告らは,賃確法6条2項,賃確法施行規則6条4号について,事業主が必ずしも合理的な理由がないとはいえない理由に基づき賃金の全部又は一部の存否を争っている場合にも,同法6条1項の適用除外を定めたものであるとして,上記の未払割増賃金に対する遅延損害金について,商事法定利率によるべきであると主張する。しかし,賃確法6条2項は,賃金の支払の確保措置を通じて労働者の生活の安定を図るという趣旨に基づき,賃金の支払遅滞が「天災地変その他のやむを得ない事由で厚生労働省令で定めるものによるものである場合」に同条1項の適用を除外しようとするものであり,その規定の趣旨及び文言に照らせば,同条2項,同規則6条4号は,事業主の賃金支払拒絶が天変地異と同視しうるような合理的かつやむを得ない事由に基づくものと認められる場合に限り,同法6条1項の適用を除外したものと解するのが相当である。被告らの上記主張は,採用することができない。
原告は,被告らに対し,連帯して201万4333円に対する平成22年10月6日から支払済みまで年14.6%の割合による金員の支払を求めることができるというべきである。
8 争点7(原告の割増賃金請求が信義則に違反するかどうか)について
被告らは,いくつかの事情を摘示して,原告の割増賃金請求が信義則に違反する旨を主張するが,いずれの事情をもってしても,原告の請求が信義則違反であると評価するに足りない。
特に,被告らは,原告が背信的意図に基づく機密保持義務違反行為に及んだことを強調するが,仮に,原告に被告ら摘示の事実があり,それにより被告らが損害を被ったとしても,それをもって原告の賃金請求が信義則違反である旨を主張することは,原告に対する債務不履行又は不法行為に基づく損害賠償請求権を自働債権として原告の賃金債権を相殺するものにほかならず,賃金全額払の原則(相殺禁止の趣旨を包含する。)を定めた労働基準法24条1項本文の趣旨を潜脱するものであることが明らかである。
したがって,原告の割増賃金請求が信義則に違反するとは認められない。
9 争点8(被告らに対し付加金の支払を命じるべきであるかどうか及びその金額いかん)について
原告は,平成22年1月〜同年9月分の割増賃金にかかる付加金について,被告らに対し,平成24年6月4日に本件訴えを提起し,その支払を求めたものである。そして,被告らは,労働基準法の規定に違反して,原告に対する時間外労働等についての割増賃金の支払をしなかったものであるところ,その違反の程度や態様については,専門業務型裁量労働制に係る法令の解釈適用を誤ったことに起因するものであり,必ずしも悪質であるとはいえない。他方,被告らは,本件訴訟に至って以降,賃金全額払の原則を定めた労働基準法24条1項本文の趣旨を潜脱するものであることが明らかな主張を重ねるなどして,原告に対する未払割増賃金の支払をしようとしなかったという事情も存する。これらの諸般の事情を総合考慮すれば,本件においては,被告らに対し,同法114条ただし書所定の期間内の付加金として,20万円の支払を命じるのが相当である。