567 - 唐睾睾睾 2014/01/09(木) 18:37:13 ID:.jMEx8/.0
2 争点1(原告が被告らに対し時間外労働についての割増賃金の支払を請求し得るかどうか)について
(1)労働基準法38条の3所定の専門業務型裁量労働制は,業務の性質上,業務遂行の手段や方法,時間配分等を大幅に労働者の裁量にゆだねる必要がある業務として厚生労働省令及び厚生労働大臣告示によって定められた業務を対象とし,その業務の中から,対象となる業務を労使協定によって定め,労働者を実際にその業務に就かせた場合,労使協定によりあらかじめ定めた時間働いたものとみなす制度である。労働基準法施行規則24条の2の2,平成14年厚生労働省告示第22号は,「税理士の業務」を専門業務型裁量労働制の対象と定めるが,ここで「税理士の業務」とは,法令に基づいて税理士の業務とされている業務をいい,税理士法2条1項所定の税務代理,税務書類の作成,税務相談がこれに該当すると解するのが相当である。
(2)ところで,税理士の業務については,税理士法52条により,税理士又は税理士法人(税理士が社員となって設立する。税理士法48条の2及び4)でない者が行うことが制限されており,税理士又は税理士法人以外の者が業として他人の求めに応じて税務代理,税務書類の作成等を行うことは許されない。また,税理士の業務は,公認会計士の業務,弁護士の業務,建築士の業務等と並んで,いずれも専門性の高い国家資格を要する業務であることに基づき,労働基準法38条の3所定の専門業務型裁量労働制の対象とされたものである。これらのことに照らせば,専門業務型裁量労働制の対象となる「税理士の業務」は,税理士自身,すなわち,税理士法3条所定の税理士となる資格を有し,同法18条所定の税理士名簿への登録を受けた者自身を主体とする業務をいうものと解するのが相当である。
もっとも,実際のところ,税理士でない税理士事務所又は税理士法人の従業員が,税理士事務所又は税理士法人の内部において,税理士又は税理士法人の指示により,税理士又は税理士法人が行うべき税務書類の作成等の業務を,単なる補助者にとどまらない立場で事実上行うという場合もあり得る。被告らは,このような税理士以外の従業員による事実上の税務書類の作成等の業務について,実質的に「税理士の業務」を行うものと評価して,専門業務型裁量労働制の対象と認め得ることを前提に,原告に専門業務型裁量労働制が適用されると主張するものであると理解される(なお,原告による業務が,税理士又は税理士法人が行うべき税務書類の作成等の業務でなく,単なる税理士の補助的業務であるというのであれば,そもそも実質的に「税理士の業務」を行うものと評価する前提を欠くといわざるを得ない。)。
しかしながら,仮に,被告らが主張するように,税理士以外の従業員による事実上の税務書類の作成等の業務について,実質的に「税理士の業務」を行うものと評価して,専門型裁量労働制の対象と認め得る余地があるとしても,前記のとおり,そもそも税理士又は税理士法人でない者が業として他人の求めに応じて税務書類の作成等を行うということ自体が法律上制限されていることに照らせば,税理士以外の従業員による事実上の税務書類の作成等の業務を専門型裁量労働制の対象と認め得るためには,少なくとも,その業務が税理士又は税理士法人を労務の提供先として行われるとともに,その成果が当該税理士又は税理士法人を主体とする業務として顕出されることが必要であるというべきである。