566 - 唐睾睾睾 2014/01/09(木) 18:37:01 ID:2zKTg5rI0
(5)付加金の支払請求について
付加金の支払を命じるかどうか,その金額をいくらにするかは,裁判所の裁量であり,使用者の行為が悪質であるかどうかということを勘案して決するが,結果的に割増賃金の不払があったとしても,労働組合の了解の下で実施された賃金や労働時間の決め方から発生したものであり,労働基準法の解釈が誤っていたという面が大きい場合には,制裁としての付加金の支払を命ずることは相当ではない。本件は,正に上記の場合に該当するから,被告らに付加金の支払を命じるべきではない。
4 争点
本件の主たる争点は,次のとおりである。
(1)原告が被告らに対し時間外労働についての割増賃金の支払を請求し得るかどうか(争点1)。その前提として,原告に労働基準法38条の3所定の専門業務型裁量労働制が適用されるかどうか。
(2)原告が被告らに対し深夜労働についての割増賃金の支払を請求し得るかどうか(争点2)。その前提として,原告が深夜労働についての割増賃金の支払を受けるのに,所属長の許可を要するかどうか。
(3)原告が被告らに対し法定休日労働についての割増賃金の支払を請求し得るかどうか(争点3)。その前提として,平成22年8月8日(日曜日)及び同月22日(日曜日)がいずれも法定休日であるかどうか。
(4)被告らが原告に対し割増賃金及びこれに対する遅延損害金を連帯して支払う義務を負うかどうか(争点4)。
(5)被告らが原告に対して支払うべき割増賃金の額(争点5)。
(6)被告らが原告に対して支払うべき遅延損害金の額(争点6)。
(7)原告の割増賃金請求が信義則に違反するかどうか(争点7)。
(8)被告らに対し付加金の支払を命じるべきであるかどうか及びその金額いかん(争点8)。
第3 当裁判所の判断
1 前記争いのない事実等,証拠(甲2,11,乙1,2,4,6,7,11,15)及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められる。
(1)被告会社は,会計事務代行業務等を目的とする株式会社であり,被告法人は,税理士法人であるが,被告らは,代表者を同じくするとともに,その本店所在地ないし主たる事務所の所在地も同一である。被告らの従業員構成もほぼ同一であり,従業員のほとんどが,被告会社と被告法人の双方に雇用されている。
(2)被告らの就業規則は,ほぼ同一の内容であり,勤務時間,休憩,休日,休暇等についても,同じ内容の定めがされている。しかし,被告会社と被告法人の双方に雇用された従業員について就業時間や給与等を調整するような定めは一切なく,そのような従業員も,被告らそれぞれにおいて同一に定められた就業規則に従って就業することとされている。
(3)被告らに行政書士法人レガシィを加えたレガシィマネジメントグループにおいては,平成22年1月1日付けで,賃金制度の考え方,等級体系,賃金体系について説明した「キャリア・ディベロップメント・プログラム(資産税・法人税務部社員用)」(乙4)が定められた。これは,被告らの就業規則において引用され,その一部とされていた。しかし,上記プログラムにおいては,被告らが全く区別されることなく,一体として賃金制度,等級体系,賃金体系が構築されていた。
(4)原告は,税理士となる資格を有せず,税理士名簿への登録も受けていなかったところ,被告らとの間で,被告らの法人税・資産税部門の税理士の補助業務を行うスタッフとして,期間の定めなく雇用される旨の労働契約を締結し,被告らそれぞれの就業規則に従って就業することとされた。そして,被告らから雇用されている間,被告会社から給与月額として29万7000円,被告法人から給与月額として4万円の支払を受けていた。しかし,被告らに雇用される際に,被告らから給与月額の提示として交付された書面(甲11)には,被告らのいずれが支払元であるかを何ら区別することなく,給与月額については,基本給23万9000円,専門性手当4万8000円,資格手当5万円の合計33万7000円である旨が記載され,年収については,賞与として月額給与4か月分の8割の額を加えた合計512万3000円である旨が記載されていた。
(5)原告は,被告らに雇用されている間,確定申告に関する業務,土地等の簡易評価の資料作成業務等を行っていたところ,その業務が被告会社の業務であるのか被告法人の業務であるのかについては,明確に特定区分されることはなかった(なお,税務相談や税務申告等の税理士法人でなければできない業務については,被告法人として行い,原告も,被告法人に対してその労務を提供していたという事実を認めるに足りる証拠はない。)。