564 - 唐睾睾睾 2014/01/09(木) 18:36:24 ID:.jMEx8/.0
エ 以上より,被告らは,原告に対し,連帯して割増賃金201万4333円及びこれに対する遅延損害金を支払うべき義務を負う。
(3)遅延損害金の支払請求について
原告が既に被告らを退職している以上,上記の未払割増賃金については,賃金の支払の確保等に関する法律(以下「賃確法」という。)6条1項及び賃確法施行令1条により、最終給与支払日の翌日から年14.6%の割合による遅延損害金が発生する。したがって,原告は,被告らに対し,連帯して201万4333円に対する平成22年10月6日から支払済みまで年14.6%の割合による金員の支払を求めることができる。
(4)信義則違反の抗弁について
被告らは,原告の割増賃金請求が信義則に反するものとして許されないと主張し,その評価根拠事実として,様々な事実を主張するが,その事実自体が認められないものがあるほか,その関連性も不明である。
仮に,原告に背信的意図に基づく機密保持義務違反行為があったとしても,それを根拠に原告の請求が信義則に違反する旨を主張することは,労働基準法24条1項(賃金全額払いの原則)に反し,主張自体失当である。
したがって,被告らの信義則違反の抗弁は,理由がない。
(5)付加金の支払請求について
被告らは,労働基準法37条1項,4項,労働基準法施行規則20条1項に違反して,原告に対し,長期にわたり多額の割増賃金を支払わず,再三請求を受けた後も何ら対応しなかった。被告らの労働基準法違反の程度や態様が極めて悪質であり,原告が受けた不利益は甚大である。被告らには,付加金の支払を命じることが相当でないと認められるような特段の事情は認められない。
したがって,原告は,被告らに対し,労働基準法114条に基づく付加金として,201万4333円及びこれに対する本判決確定の日の翌日から支払済みまで年5%の割合による遅延損害金を連帯して支払うことを求めることができる。
3 被告らの主張
(1)割増賃金の支払請求について
ア 原告の時間外労働,深夜労働及び法定休日労働についての割増賃金201万4333円が未払であることは,否認し,又は争う。
イ 時間外労働についての割増賃金の支払請求(原告に対する専門業務型裁量労働制の適用の有無)について
被告らにおいては,労使協定により労働基準法38条の3所定の専門業務型裁量労働制が定められるとともに,就業規則において,上記専門業務型裁量労働制に係る規定として,本件規定が置かれている。そして,原告については,税理士ではないものの,上記専門業務型裁量労働制が適用されていたから,時間外労働という概念自体あり得ず,被告らは,原告に対し,時間外労働についての割増賃金を支払うべき理由はない。
すなわち,同条の3所定の専門業務型裁量労働制の対象となる業務の範囲については,その業務を行う手段や時間配分の決定などについて使用者が具体的な指示をすることが困難な業務か否かという観点から実質的に解釈されるべきである。同条の3第1項1号,労働基準法施行規則24条の2の2第1項6号及び平成14年厚生労働省告示第22号により専門業務型裁量労働制の対象業務とされた「税理士の業務」とは,飽くまで,法令に基づいて税理士の業務とされている業務をいうのであり,税理士法上,税理士のみならず税理士法人が税理士の業務を行うことが予定されている以上(税理士法52条参照),税理士として登録していない者が,実質的に税理士の業務を行うということも当然にあり得るところであり,税理士法2条1項に規定する税務代理,税務書類の作成等が「税理士の業務」の例であるとする平成14年基発第0213002号も,税理士として登録している者しか「税理士の業務」の主体になり得ないことまでは意味していない。そして,原告は,税理士法人である被告法人の従業員として,顧客の窓口,相談対応,調査,申告書類作成等,実質的に税理士の業務に従事していたのであり,その業務は,登録のある税理士が行う税理士の業務と同様,その手段や時間配分の決定などについて使用者が具体的な指示をすることが困難な業務であるといえる。実際に,被告らは,原告に対し,業務の進め方(どのような順序,方法で当該業務を行うべきか)については具体的指示をしておらず,それは,配分を受けて納期を指示された原告の裁量に任されていたものである。したがって,原告には労働基準法38条の3所定の専門業務型裁量労働制が適用されるというべきである。
なお,原告は,被告らが専門業務型裁量労働制に関する協定の届出をしなかったことを問題視するが,協定の届出は,専門業務型裁量労働制の効力要件ではないから,専門業務型裁量労働制の適用は否定されない。