558 - 唐睾睾睾 2014/01/09(木) 18:35:04 ID:U7buchRs0
イ 違法性阻却事由の存在を窺わせる事情の不存在について
本件投稿は真実でない上,本件投稿で描写の対象となっているのは,小規模な一個人経営の塾の問題であり,かかる問題に何ら民主主義的意義は見出すことはできないため,到底公益目的は観念し得ず,公共の利害に関するものでもない。
なお,原告において「合格実績ねつ造」「盗聴器事件」について過去に認めた事実はない。また,本件投稿者が本件投稿を行う際,原告に事実関係を確認するなど適切な取材をした事実は存在せず,本件投稿者が「合格実績ねつ造」「盗聴器事件」という記載について真実と信ずるに足りる相当の理由があったとはいえない。
よって,本件投稿は,違法性阻却事由の要件を満たすものではなく,原告が名誉権の侵害を受けていることは明白である。
(2)被告の主張
ア 原告の権利侵害について
本件投稿には,原告の名前及びそれに関連するものは全くないから,一般の閲覧者をして,本件投稿が原告についての投稿であるとは受け取られないし,「Y先生が生徒に抱きつき事件」「英検だったか漢検だったかの不正合格」「盗聴器事件」との記載だけでは,原告自身に何か問題があるとも読み取れず,原告の社会的評価を低下させるものとはいえない。
また、本件投稿は,そもそも「ここまだ潰れてなかったんだ」「もう長くないと思ったけどな」といった投稿者の単なる感想を述べたものであり,原告の名誉を毀損するものとはいえない。
イ 違法性阻却事由の存在を窺わせる事情の不存在について
子供の教育に関わる塾に対しての意見は,公共性及び公益目的があるといえる。また,教育指導研究会については,過去にも「セクハラ」「合格実績ねつ造」「盗聴器」についてインターネット掲示板で書き込みがあり,また,ある程度の部分については,教育指導研究会自身が認めていることからすれば,本件投稿の意見の前提としている事実の重要部分が真実であるか,又は投稿者が真実と信ずるに足りる相当の理由があった可能性がある。
よって,仮に,本件投稿が原告の名誉を毀損するとしても,本件投稿についてはいずれも違法性阻却事由が存在する可能性があり,原告に対する権利侵害が明白であるとまではいえない。
第3 当裁判所の判断
1 プロバイダ責任制限法4条1項1号は,発信者情報開示請求の要件の一つとして,「権利が侵害されたことが明らかであるとき」(権利侵害の明白性)と定めているところ,これは,発信者のプライバシー及び表現の自由と開示請求者の権利回復の必要性との調和を図るため,その権利が侵害されたことが明らかである場合に限って発信者情報の開示請求を認めることにしたものと解されるから,開示請求者は,権利侵害にかかる客観的な事実が存在することのみならず,その侵害行為に違法性阻却事由の存在を窺わせる事情が存在しないことをも主張立証する必要があると解するのが相当である。
2 以上の見地から,本件投稿が原告の名誉を毀損することが明らかであるか否かを検討する。
(1)原告の権利侵害について
ア インターネット上の掲示板に掲載された情報が他人の社会的評価を低下させるものであるか否かは,一般の読者の普通の注意と読み方とを基準に,前後の文脈等を考慮し,当該情報全体が読者に与える印象によって判断するのが相当である。また,当該情報の特定の表現が事実の摘示を含むか否かも,一般の読者の普通の注意と読み方とを基準として,証拠等によりその存否を決することが可能な特定の事実を摘示しているか否かによって判断すべきである。