550 - 唐睾睾睾 2014/01/09(木) 18:32:02 ID:L/DU0nnI0
第3 当裁判所の判断
1 前記争いのない事実等に証拠(甲12,30,証人P17のほか各項末尾に記載)及び弁論の全趣旨を総合すると,本件の経過について以下の事実が認められる。
(1)昭和9年ころ,P4は本件建物を取得したが,4女であるP10名義でこれを登記した。(甲3)
(2)P4は,昭和28年6月21日に死亡し,長男であるP12が本件各土地及び本件建物を引き継いで居住し,個人事業として造園業(長嶋造園)を行っていた。原告は,P12と同居して17歳ころからこれを手伝い,昭和48年ころには長嶋造園を継いで,P18家の家計を預かることとなり,本件各土地や本件建物の固定資産税を支払うようになった。なお,これらの固定資産税の課税の名宛人は,不動産登記簿上の所有者であったが,固定資産税納税通知書は原告のところに届いていた。(甲14ないし16,23ないし25(いずれも枝番全てを含む。))
(3)P12は,平成元年4月1日に死亡した。P12の遺産は,本件各土地と本件建物であり,その後も原告がその利用を引き継ぎ,居住するとともに長嶋造園を営んでいた。P12の相続人は,原告以外にも複数名がいたが,P12の法事の際に,原告の弟であるP19の妻から,墓くらいはもらえないか,といった話があったものの,遺産分割の具体的な協議がもたれることはなかった。また,本件各土地の不動産登記簿上の所有名義については,P4の名義が残っており,ただちに名義を移転するのが困難であった上,そのころ,P12やその妻の死が相次いだことから対応はされなかった。また,P12の相続に関する相続税の申告もされなかった。
(4)本件建物については,これらの状況が落ち着いた平成5年6月18日に,既に婚姻により本件建物を出ていたP10から原告へ贈与により不動産登記簿上の所有名義が移転した。
(5)なお,本件各土地のうち,本件土地1の一部は,以前からP15家に地代月額1万円で賃貸され,P15家では同土地上に建物を所有してこれを占有していた。昭和46年ころ,P12は,当時の借地人であったP16に対し地代月額1万円の増額を申入れたが,紛争となったことから増額をあきらめ,前記地代のまま契約が継続していた。その後,P12の死亡により貸主は原告となり,また,P16の死亡によりP20とP21が建物を持分2分の1ずつで共有してP20が借地人となり,同人の死後はP21が建物の所有権を全部取得して借地人となり,同人の家族とともに同建物に居住している。平成22年9月からは,P21と原告との交渉により,地代月額は2万円となった。(甲20ないし22,26ないし29(いずれも枝番全てを含む。),乙4,6)
(6)平成22年6月30日ころ,本訴原告代理人は,被告らに対し,被告らが本件各土地についてP4の登記名義を相続によって承継しているところ,原告に登記名義を移転するために相続分譲渡証の作成をして欲しい旨を申し入れた。(乙1,2)
2 原告による本件各土地の占有について
以上によれば,原告は,平成元年4月1日以降,P12の死亡により同人の占有を引き継ぐ形で,原告自身が本件建物を占有使用するなどして,また,本件土地1の一部についてはP15家に借地に出すことで,本件各土地を占有していたといえる。
3 原告の本件各土地の所有の意思について
(1)占有者は,所有の意志をもって,平穏かつ公然と占有するものと推定される(民法186条1項)が,本件では,原告は,P12からの相続によって本件各土地の占有を取得しているところ,P12には原告以外にも相続人がいたから,本件各土地の全体について所有の意思があったことが推定されるものではない。
しかし,原告は,P12と同居してその個人事業である造園業(長嶋造園)を手伝い,昭和48年ころにはこれを継いで,P18家の家計を預かることとなり,本件各土地や本件建物の固定資産税を支払うようになったこと,P12の遺産は本件各土地と本件建物であり,原告はその利用を引き継ぎ,居住するとともに長嶋造園を営んでいたが,P12の他の相続人から,原告が本件各土地を占有することについて具体的な異議を述べた者はなかったことからすれば,原告は,P12の相続のときから本件各土地について単独所有者としての自主占有を取得したものというべきである。