539 - 唐睾睾睾 2014/01/09(木) 18:27:25 ID:L/DU0nnI0
2 原告らの主張
(1)本件記事における記載の対象
本件記事において記載の対象となっているのは原告らである。本件記事には「芸大の邦楽科のMという教授」,「在日の女性R」との記載があるが,これはそれぞれ原告X2,原告X1を指すものである。
(2)本件記事による原告らの名誉毀損
本件記事は,原告X2が原告X1といわゆる不倫関係にあるとの真実に反する事実を摘示し,原告らの社会的評価を低下させ,その名誉を毀損するものである。また,本件記事は,読者に対し,原告X2が大学の人事を私物化しており,原告X1がこのような私物化がなければ准教授に就任することができない人物であるとの印象を与え,原告らの名誉を毀損するものである。
本件記事に記載されているのは男女の私的関係であり,公益目的は観念し得ず,公共の利害に関するものでもない。
3 被告の主張
(1)本件記事における記載の対象について
原告らの主張は,争う。本件記事の読者は,本件記事の「M」及び「R」がそれぞれ原告X2,原告X1を指すと理解することはできない。
(2)本件記事による原告らの名誉毀損について
原告らの主張は,争う。本件記事の読者は,単なる発信者の意見や憶測が記載されていると解釈するにとどまるから,本件記事が原告らの社会的評価を低下させることはない。
本件記事が事実を摘示するものであると解されるとしても,摘示事実は,大学関係者等の多数の者の利害に関係し,これらの者が関心を寄せることが正当であり,大学の人事について注意を喚起する意図がうかがわれるから,公共性及び公益目的がある。また,真実性又は真実相当性がうかがわれる事情があるから,本件記事の投稿の違法性が阻却される余地がある。
第3 当裁判所の判断
1 本件記事の記載の対象について
本件記事が掲載されたスレッドには,本件記事の直前に,「東京芸大音楽学部邦楽科邦楽囃子の教授は本年定年退官。後任人事を巡って様々な憶測が芸界内で飛び交っている。」との記事が掲載されており(甲11),また,本件記事が投稿された平成23年11月25日当時,東京芸大音楽学部邦楽科の講座においては,姓の頭文字のアルファベットが「M」である教授は原告X2の他におらず,姓の頭文字のアルファベットが「R」である非常勤講師又は助手は原告X1のほかにいなかったこと(甲7)によれば,本件記事の対象は原告らであることが認められる。そして,原告X2が東京芸大音楽学部邦楽科第4講座の指導教員であることは同大学のウェブサイトに公表されており(甲12),原告X1が在日韓国人であって,東京芸大音楽学部邦楽科に在籍していることも公表されていること(甲5)に照らせば,本件記事の対象が原告らであることは,その読者においても認識し得たと認めることができる。
2 本件記事による原告らの名誉毀損について
法4条1項1号に定める「開示の請求をする者の権利が侵害されたことが明らかである」というには,開示請求者において,権利が侵害されたことに加え,当該侵害について,違法性阻却事由の存在をうかがわせるような事情が存在しないことを主張,立証する必要があると解するのが相当である。
そこで,本件について,上記のような観点から検討する。
(1)社会的評価の低下について
本件記事には,「芸大の邦楽科のMという教授が,私生活で懇意にしていた在日の女性Rを自分の次の准教授に推し,それが確定したようです。」,「邦楽界からかなりクレームが出ています。どうやら,憶測ですが,学長もグルのようです。」,「彼女は,古典の世界では何の知名度も無く,一人の師について修行もつんでいません。芸名もありません。」との記載があるが,これらは事実を摘示するものであるということができる。そして,これらの摘示事実(以下「本件摘示事実」という。)は,本件記事の一般の読者にとって,東京芸大の邦楽科の教授である原告X2が,原告X1といわゆる不倫関係にあり,そのために原告X1を准教授に推薦し,学長と通謀して,本来であれば准教授に就任することができるほどの実績のない原告X1を准教授に就任させたと理解されるものであり,このような読者に対し,原告X2が東京芸大の教授人事を情実により左右し,原告X1は准教授に就任することができるほどの実績がないにもかかわらず,准教授に就任させようとしているとの印象を与えるものであるということができるから,原告らの社会的評価を低下させるものであると認められる。