629 - 一般カタルーニャ人 2023/08/05(土) 22:27:47.15 ID:AAE5A+6q0
─────それからどれだけの時が経ったか、場所が変わって『山本脳神経外科病院』と呼ばれる重々しい雰囲気の精神病院――
そこには、一人の「身元不明の廃人状態の患者」が搬送されていた。
診察室から出てきたその患者を見送りながら、医師達はあまりに惨たらしい状態のその患者について話題が尽きなかった。
医師A「あの患者、まだ身元がわからないのか?」
医師B「ああ……ひどいもんだよ。脳神経がズタズタにやられてる。一生あのまんま(の状態)だそうだ……」
全身ボロボロで車椅子に乗せられ、生気を感じさせない虚ろな目を浮かべ、口からは涎を垂らしながら、隔離病棟へと移送されていくその重症の患者。しかし誰一人として気づくことはないだろう。
それが有能会計士・森会長に心身共にいたぶり尽くされた唐澤貴洋の成れの果てだということを……
そして、隔離病棟と一般病棟を仕切る鉄格子の扉が閉ざされ、薄暗い廊下に金属音が響き渡った瞬間……
唐澤「ぁ……うわああああああ!!! 助けて!!ひろあきいいいいいいいいいいいいいいいいい!!!!!!!!!!」
唐澤はそこに存在するはずのない森と山本祥平の影に怯え、錯乱する。
あの戦いの後にもどれだけ凄惨な目に遭ったのか、森によって植え付けられた恐怖・絶望・苦痛は、最早他愛もない物音にさえ、小動物のように過剰に反応して取り乱してしまうまでに、彼の心をすっかり壊してしまっていたのだ。