739 - 核撃てば尊師 (sage) 2013/06/24(月) 16:50:52 ID:3zZIFAiU0
Kがこの学校を卒業してから、すでに20年が経過している。
彼は影の薄い男だった。
「おとなしくて目立たない、クラスで最も地味なヤツでした」と、元同級生のひとりは言う。
「友達もほとんどいなかったんじゃないかなあ。いつも、ひとりで行動していた。3年生のとき、確か家出して1週間ほど学校を休んで話題になったこともありましたね。でもそれ以外、彼のことって全然思い出すことができないですね」
私が話を聞いた元同級生たちは、誰もが同じ印象を口にした。
「無口」「物静か」「気が弱そう」
かつての女子生徒のなかには「K? そんな名前の人、聞いたことがない」と、存在そのものを否定する者までいた。卒業アルバムを確認してもらってようやく出た言葉は「ああ、小太りの男。見たことはあるかもしれない」だった。
Kは一時期、生徒会の役員を務めたこともあるが、その事実すら覚えている者は少ない。「生徒会なんて誰もやりたがらない雑用係みたいなものだったから、みんなでKに押し付けたに違いない」と断言する元同級生もいた。
存在感のなさ?その一点のみで、Kは同じ教室で過ごした者たちの記憶の端に、かろうじてぶら下がっているだけだ。